みなさんごきげんよう
マキ学長です


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アストルティアのチームメンバー募集に限らず、ネット上のサークル員募集でよく掲げられているのは、「一般常識のある方でお願いします」っていう応募資格。

ドラ10ではチムメン募集が10あったら7ぐらいにはこの言葉が書いてあるけど、みんなさして気にしないで入会を希望する。
その常識の正体が何なのかあまりよくわからないけど、自分は大丈夫って思ってる。
たぶんわたしも思ってる。

だからたぶんこの項目にはあまり意味がないのかもしれないけれど、顔つきとか話し方とかちょっとした佇まいから、一瞬のうちに「コイツ、ヤバイかも?」という信号を読み取ることのできないネット社会においては、自分たちの居心地を守るささやかな盾として、一般常識をかかげたくなる気持ちもよくわかる。

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大学時代、マキさんが所属していたサークルでは毎年、メンバーの住所氏名や趣味などのプロフィールを載せた名簿が作られていたのだが、2年上の卓哉先輩のページを読んでわたしは仰天した。

「座右の銘」
の欄に、卓哉さんが
「君子和して同ぜず、小人同じて和せず」
と書いていたからだ。

「君子和而不同。小人同而不和。」は孔子の『論語』に登場する説法のひとつで、
「大物は周囲と和睦することはあっても、かんたんに他人に同調しない。
反対に、小人物はたやすく人の言うことに迎合するが、他人と調和することができない。」
という意味。

このサークルがどんな団体だったのかと言うと都内の大学にありがちな「スポーツ同好会を装ったバカサー」で、看板としてはバレーボールサークルを掲げていた。
メンバーは中・高とバレーボール部で地味めな出自にコンプレックスを抱く学生たちが数多く集い、つまりは「変身願望の集合体」であった。
自分を含めて。

週1回2時間程度の練習を終えては酒を飲み、適当な試合に出場しては勝ってもいないくせに酒を浴び、合宿と称して長野の山奥に出向いては酒を飲んで川へ飛び込み、クリスマスや花見の時期には連日連夜のパーティピーポー、絵にかいたような「小人」のあつまりだった。

当時弱冠18歳、本当はオタクのくせして「マキ、都会に出て超楽しんでまぁす★」って地元の同級生に自慢したいがためにこのような謳歌系サークルに入ってしまったマキさんもまた、キラキラ女子大生に擬態し、周囲の慣習に溶け込もうと躍起になる「小人」のひとりだった。

したがって卓哉さんの『論語』は、バカサーの姫たらんとしていたマキさんの背後を急襲し右後頭部をフルスイングでブチ抜いた。
ぐらいの衝撃があった。
「なあお前、そこでいったい何やってんの?」
耳元でそう言われた気がして、名簿を手にわたしは卒倒しそうになった。

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卓哉先輩は4年生だが、1年浪人していて年齢的にはわたしより4つ上だったのでとても大人に見えた。
大学でもっとも偏差値の高い学部に所属し、大学近くのマンションから海外製のロードバイクにまたがって颯爽と通学し、授業のあとは図書館に寄ってからサークルの練習に出ていた。

アタマが良くて金持ちで、それでいて顔もスタイルも良かった。
ただしファッションセンスはもう一つなところがあって、時々ハサミ柄のシャツとか着ていたけれど、そんなところを差し引いても余りある若き魅力の塊、ああ天は卓哉さんに二物も三物も与え給うたのだ。
就職先?もちろん心配ご無用、世に知らない人のない有名広告代理店に決まっていた。

そんな完全無欠の卓哉先輩が、まるで他のメンバーを嘲るように「ザコはすぐに群れたがる」みたいな言葉を書いたら、バカにしやがってと怒り狂うメンバーもいるのではないかとマキさんはハラハラした。
が、杞憂に終わった。

今はバカサーの住人とは言え、メンバーはみな受験戦争を勝ち抜いてきた者たちなので、論語の意味するところは理解していた。
でも誰も、自分のことを言われているとは思わないのである。

そ…そうか。
小人は、「自分が小人だ」なんて思いもよらないものなんだ。
だれだって、「自分はそこらへんのネトゲ廃人とちがって、ちゃんと常識あるもん」って思って生きているんだ。


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わたしたちはいったい、なにを常識と呼んでいるのだろう。
答えは出ないけれど、アストルティアにおいて議論の多い、「装備の耐性を整えるかどうかについて」を例にちょっとだけかんがえてみる。

敵が仕掛けてくる攻撃の全てに耐性が100であることが常識だと考える人もいるし、そのバトルで一番致命的なのは特技封印されることだから、それさえクリアできてればOKの範囲だと思う人もいるし、4人のうち2人位は眠り耐性がなくても勝つことはできるよね、とゴーサインを出す人もいる。


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付き合いの長い四人でいきましたが、けっこうこの四人とて、耐性の考え方はバラバラだと思う

フクロウ型のボスをたった一ぴき倒すだけでも、これだけのスタンスの違いがある。
ならばもう、全アストルティアの空を統べる一般常識なんてモノはきっとどこにもなくて、あるとすればきっとそれはそのときどきの4人という最小単位のなかでおたがいの差異をカバーしようと努めることでしかなくて、きっとそれは「さっきは封印されちゃって迷惑かけたね」「大丈夫だよ、今日はありがとう」そんな想像と対話とを、繰り返して築き上げてゆくほかはないんじゃないだろうか。


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当大学では、アストルティアにおける相方経験者を集めたアブない地下組織「相方文化研究所」を運営しているんだけれど、細かいルールは定めていない。

だって定められるわけがないからだ。
「ゲーム内で秘密の恋愛をする人々」が、一般常識の枠内に生きている、だなんてそもそも言えなさそーだし、誰にもうしろ指さされない暮らしなんてもうとっくに手放した上級者の群れだからだ。

周囲をなぎ倒し、常識を踏み潰して、竜巻のように進む、愚かしくも愛すべき、相方プレイヤーズ。
だから面白い。
人が裸になったところにこそ文化がある。
いつだって、余計な嫉妬を抱き、周囲にひたすら迷惑をかけ、修羅場に遭遇してはキャラを作り変え、懲りもせず何度も恋に落ちながら生きるのだ。

そんなメンバー達をまとめあげるのは不可能で、というか「常識」を旗印にまとめようなんて最初から思っていない。
ただただ、「どうしてそう思うのだろう?」「どうしてその行動に至ったのだろう?」と、毎度毎度、考えたり、直接尋ねてみたりする。
そして自分のこころのどこかに、相手に似た断片が存在しないかどうか、ほんのちょっとでもいいからさがしてみたいんだ。

多分その繰り返しが、だれかと行動をともにするということなんだと思う。
チームでもフレンドでも、恋人どうしでも。




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